映画雑記

好きな映画のことを好きなように好きなだけ書く日記です。

5.『全員死刑』

今年もあと一ヶ月を切りましたので、

一番ヤバかった邦画2017を紹介したいと思います。

 

全員死刑』(2017)

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監督:小林勇貴

脚本:小林勇貴継田淳

音楽:中山考

撮影:鈴木啓造

出演:間宮祥太朗、毎熊克哉、六平直政入絵加奈子、清水葉月

原作:鈴木智彦「我が一家全員死刑

 

借金を抱えたある家族が、強盗目的で知人一家殺害を計画する。

原作は、2004年に実際に起こった大牟田4人殺人事件を

題材にして書かれた「我が一家全員死刑」。

主人公の次男・タカノリ(間宮祥太朗)目線で物語は進む。

 

あのね、とんでもありませんでした、この映画。

本当に度肝抜かれました。こんなの初めてだよ…。

 

まずさ、このポスターいいよね。Vシネっぽくて。

 

先日、ラジオで映画評論家の町山さんが『全員死刑』を紹介していて

「まあ、言ってしまえばこの映画は”地獄のサザエさん”ですよ!」

と言っていたんです。

 

それを聞いていた私は、

「なんだよ、”地獄のサザエさん”って!そんな映画あるか!」

と思わずツッコミを入れてしまったんだけど、

急にどんな映画なのか気になってきて、見に行ったわけです。

 

 

映画館はまあまあ混んでいて、私の両隣も埋まっていました。

右隣には大学生らしき男女3人グループ、

左隣には私と同じく一人で見にきていた若い女性。

 

あまり期待しないまま、映画はスタート。

始まったら、もう笑いが止まらなくて、どうしようかと思いました。

 

内容はとてもバイオレンスで、えげつないし、

見ていて全く気持ちよくないのに、とにかく爆笑してしまいます(笑)

 

そして、”地獄のサザエさん”、その通りでした。

さすが町山さん…。

 

しかし驚いたことに、映画館にいる全員が笑ってるわけじゃなくて

笑ってる人と笑ってない人で真っ二つ。

 

実際、私の右隣に座っていた大学生の男の子は

私とほぼ同じタイミングで爆笑してるのに、

私の左隣に座っていた女性と右隣の彼以外の男女は1ミリも笑ってなくて、

「ウソだろ」ってなりました。

 

もちろん心のどこかで

「この映画を見ながら笑っちゃいけない」って思ってる自分もいるんですが、

殺人の話で笑うなんて不謹慎でしょう、とそりゃ誰もが思うわけです。

 

でも、この映画はそんな常識から逸脱して、

とにかく笑かしてくる。モラルなんてないんじゃ!という感じで。

 

この事件自体、モラルなんて言葉は初めから存在しないような出来事です。

強盗殺人の計画はあまりにもずさんで、全てが行き当たりばったり。

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もちろん、すぐに足がつき、逮捕された家族4人は

罪のなすりつけ合いを繰り返し、父親は自殺未遂するわ、

長男は脱走するわ、法廷で喧嘩を始めるわ、で

しまいには退廷時に次男が「メリークリスマス!」

と、わけわからんことを叫ぶ始末。

 

さらに次男は獄中で結婚までしてる。カオスすぎます。

 

映画では、この家族4人が捕まるまでの犯行の経緯を描いていて

とにかく原作に忠実だといいいます。

この原作は、次男が獄中に書いた手記を元にして作られたもので

これギャグでしょう、と思うところも事実らしい。

 

そんなこと、ある?って感じです、本当に。

 

あと、劇中で主人公たちが使っている方言なんですが

これオリジナル方言なんだそうです。

「〜じゃんね」「〜だら」といろんな地域の方言を

ミックスさせているみたいです。

この方言も、また田舎のヤクザというキャラクターの凄みを

際立たせていたように感じます。

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ー『全員死刑』の音楽ー

 

作中では、いろんな音楽が使われているんですが、

内容とはかけ離れたクラシック音楽なんかも登場します。

 

そこでクラシック音楽流す!?ってシーンであえて使ったりとかしているので

音楽も確実に笑いの一つとして役割を担っていたな、と思います。

 

どの曲も無節操に選んだ感じで、バラバラのように一瞬思えますが

よくよく見ているとかなり考え込まれた選曲だったんじゃないでしょうか!

 

 

主人公を演じた間宮祥太朗に関していうと、

今まで若手イケメン俳優、という印象しかなかったのに

これが初主演映画ってだいぶ面白いな、と。

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最近の少女漫画原作の映画ではなく、

この映画を初主演作品に選んだことで

彼が単なるイケメン俳優じゃなくなったことは確かです。

 

実際の次男は、相撲部屋に弟子入りしていたほどの巨漢なので

間宮祥太朗が演じるのはイケメンすぎる気もするけど、

方言とか、薬でキマっちゃってるところとか、

どこか情けない一面を持っている感じとか、上手いなあと思いました。

 

タカノリ含め、家族4人とも本物のヤクザにしか見えません(笑)

 

個人的にはタカノリの彼女・カオリ(清水葉月)のキャラクター

がとても良かったですね。

 

アンモラルでバイオレンスな世界の中で笑いが存在する。

笑いながらも、ノリで人を殺してしまう狂気が本当に恐ろしい。

 

こんな映画見たことないです。

確実に今年イチ、ヤバい映画だと断言します。

 

最後に。

「ばっかじゃねーの」この一言に尽きます。