映画雑記

好きな映画のことを好きなように好きなだけ書く日記です。

9.『シェイプ・オブ・ウォーター』

 ついに週明けの月曜日はアカデミー賞です。

今年も、何時間もテレビの前から動けなくなるなぁ、と

とても楽しみにしています。

 

第90回アカデミー賞有力候補作品でもある

シェイプ・オブ・ウォーター』が本日(3月1日)公開。

早速、観に行ってきました。つい半日前に観たばかりなので

かなり粗い感想になってしまうと思いますが、

あまりにも良い作品だったので、この感動を記録させてください。

 

シェイプ・オブ・ウォーター』(2018)

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監督:ギレルモ・デル・トロ

脚本:ギレルモ・デル・トロ、ヴァネッサ・テイラー

音楽:アレクサンドル・デスプラ

撮影:ダン・ローストセン

出演:サリー・ホーキンスダグ・ジョーンズマイケル・シャノン

 

物語は1962年、ロシアとの冷戦下にあるアメリカ。

政府の機密研究施設に、ある日運び込まれてきた半魚人と

そこで掃除婦として働く口のきけない女性のラブストーリー。

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主人公のイライザを演じるのは、サリー・ホーキンス

最近だと『パディントン』のお母さん役を演じていた女優さんです。

彼女は決して美人というわけではないのですが、とにかく演技が上手い。

 

このイライザ役は口がきけないという設定なので

劇中ではほとんどセリフがありません。

誰かとコミュニケーションを取るときは、手話と表情で

相手に思いを伝えます。

 

セリフなしでここまで人の心を動かす演技ができるのか、と

サリー・ホーキンスの演技力に脱帽しました。

 

おこがましいのは百も承知ですが、”ムビ子主演女優賞”を捧げます。

本当に本当に素晴らしかったです。

 

イライザを見ていると、本当の意味での「魅力的な女性」というのは

彼女のような女性のことを言うのだな、と思えてきます。

そのくらい、可愛くて美しくて強い。

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そして、クリーチャーを演じたダグ・ジョーンズですが

ギレルモ・デル・トロ作品ではお馴染みの俳優。

私は勝手に『ヘルボーイ』に出てくるエイプの前日譚のような

感じかなと思っていたのですが、全く違いました。

 

エイプよりももっと、野性的で神々しい。

デル・トロは何かのインタビューで、

このクリーチャーのことを”守護神”と言っていましたが、

なるほど、確かに。

魚でもなく人間でもない神に近い存在だったように思います。

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この映画の登場人物は、ハンディーキャップを持った女性や黒人、

同性愛者など、その時代のアメリカ(というか世界中)で

ないものと同然にして扱われてきた人たちです。

 

一方で、この映画の中では、

権力を持った「選ばれし人」は悪者として登場します。

 

マイケル・シャノン演じるストリックランド。

彼の悪者っぷりったらすごい。ここまでかってほど悪いやつ。

それもギレルモ・デル・トロらしいなと思いました。

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ここで悪者に情けを与えて、救済でもしてしまったら

結局、ただのお涙頂戴の感動物語になってしまう。

悪者は徹底的に悪者、それがデル・トロ!好き!

 

(あまりにも性善説ラストの映画が多い気がする今日この頃です)

 

監督のギレルモ・デル・トロはメキシコ人。

私、個人的に見た目が大好きなんですが、

とっても可愛いぽっちゃりおじさんです(角野卓三じゃねえよ)。

 

しかし、彼自身は映画監督として成功するまでずっと

「選ばれなかった人」だったと言います。

唯一の友達は、画面の向こう側の怪獣たちだったそう。

パシフィック・リム』では日本への愛が爆発してましたね。

(彼は円谷プロの大ファンです)

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この『シェイプ・オブ・ウォーター』はそんなデル・トロにしか

描けなかったラブストーリーなのです。

 

偏見を持たれ続けてきた彼らにこそ本物の美しさがわかる。

そして、イライザだからこそクリーチャーを愛することができる。

 

この映画は私たちに、

「本当に誰かを愛するということ」

「本当の美しさとは何か」

を訴えかけてるのではないでしょうか。

それこそが多くの人に足りないものなのでは?と。

 

物語だけでなく、ビジュアル的な面においても

とてもよく作りこまれていたと思います。

イメージカラーのブルー(ティールというらしい)は

水の中を連想させ、60年代というレトロでダークな雰囲気も素敵。

 

あえて、現代ではなくこの時代設定したことによって

程よい「御伽噺」感が出て、

この映画の世界観により入り込みやすくなっていました。

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ー『シェイプ・オブ・ウォーター』の音楽ー

 

音楽は、『グランド・ブタペスト・ホテル』で

アカデミー賞作曲賞を獲ったアレクサンドル・デルプラ。

素晴らしかったです。

決して音数は多くはありませんが、切なくて美しい。

このメインテーマを聞くだけで、

イライザと半魚人が抱き合うシーンが頭に浮かびます。

 

イライザは、人一倍音楽に敏感で

テレビでミュージカルを見たり音楽を聴くのが大好き。

彼女の中には、いつも音楽が流れています。

 

劇中では、実際にいくつもの白黒時代のオールド・シネマの映像が

使われ、古いジャズやシャンソンが映画音楽として使われています。

 

誰よりも音楽の楽しみ方を知っているイライザは、

もしかしたら誰よりも心が豊かなのかもしれない。

この映画の音楽を通して、そんなことも思いました。

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この映画は「美しい」という言葉では簡単に表せないほどの

美しさで溢れていました。

近年見た映画の中でダントツに素晴らしかった。

こんな作品に出会えることって、なかなかないです。

 

まだ一回しか見てないので、あまりいろんなことは言えませんが

とりあえず今のところ、どこを取っても100点!

これからも『シェイプ・オブ・ウォーター』の魅力を

もっともっと発見していきたいと思います。

8.『2017年映画ベストテン 〜サントラ編〜』

 だいぶ遅くなってしまいましたが、

2017年映画ベストテン 〜サントラ編〜

をお送りします。

 

1.ラ・ラ・ランド

2.猿の惑星 聖戦記』

3.『KUBO 二本の弦の秘密』

4.ネオン・デーモン

5.スター・ウォーズ 最後のジェダイ

6.三度目の殺人

7.ベイビー・ドライバー

8.ゲット・アウト

9.DESTINY 鎌倉ものがたり

10.『たかが世界の終わり』

 

ここからは第10位から順番にわたしのコメントを

載せていきますので、気になる作品があれば見てみてください!

 

 

第10位 『たかが世界の終わり』

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音楽:ガブリエル・ヤレド

グザヴィエ・ドゥランの新作。この映画、最初から最後まで

誰かと誰かが言い合ってるという喧嘩映画(そんなジャンルない)なんですが、

音楽が非常にドラマチックに使われていて、ダレることなく見れました。

主題歌のCamille”Home Is Where It Hurts”もとても良かったですね。

 

 

第9位 『DESTINY 鎌倉ものがたり

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音楽:佐藤直紀

佐藤直紀さんらしい、美しいメロディーが印象的でした。

前半の遊びたっぷりの音楽から後半にかけて映像に迫力が出てくるのと

同時に、壮大な音楽に変わっていくのがお見事!

 山崎貴監督とはこの後もタッグを組み続けて欲しいです。

 

 

第9位 『ゲット・アウト

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音楽:マイケル・アベス

第90回アカデミー賞にもノミネートされているホラー

(というよりサイコ・スリラー)映画。映画における音の演出効果に

改めて感心しました。OPで流れるテーマ曲の絶妙な気持ち悪さ。

あれはすごい。ものすごい細かいズレが生じさせる不協和音をあれほど

緻密に作り出すとは……とても面白かったです。

 

 

第7位 『ベイビー・ドライバー

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音楽:スティーヴン・プライス

米国ヒットチャートに合わせて、カーチェイスしまくるという

斬新な本作。映画マニアにも、音楽マニアにも非常にウケが良かった

一本です。音と映像のシンクロがとても緻密に作り込まれています。

しかし、イヤホンしながら運転は違法じゃないんか、、、というのは謎。

 

 

第6位 『三度目の殺人

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音楽:ルドヴィコ・エイナウディ

作曲は世界的に有名なルドヴィコ・エイナウディ

予告編のトレーラーでも使われていたので、

公開前から話題になってましたね。チェロとピアノによる二重奏ですが、

途中で見事に伴奏と旋律が入れ替わります。

まさに、この作品のストーリーと同じ。どっちが本当なのかわからない。

音楽でそれを表現したのは、さすがとしか言いようがありません。

 

 

第5位 『スター・ウォーズ 最後のジェダイ

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音楽:ジョン・ウィリアムズ

はい、来ました。映画音楽といえば『スター・ウォーズ』!

世界中のファンが待ちに待ったEP8、やってくれましたね。

今作も期待を裏切らないクオリティの高さでした、ジョン・ウィリアムズ

”レイアのテーマ”で泣いたファンは数知れず、、、。

この作品に関しては、あまりにもマニアックなファンが多すぎるので

とりあえず、個人的に5位だったことだけご報告しときます笑

 

 

第4位 『ネオン・デーモン

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音楽:クリフ・マルティネス

ニコラス・ウェディング・レフン、今回もだいぶパンチのある映画を作りました。

映画としての内容は個人的にそこまで評価は高くないんですが、

クリフ・マルティネスのゴリゴリの音楽が最高でした、本当に。

やはりレフンの映像にはマルティネスの音楽がよく合いますね。

邪悪な気分になりたいときはオススメの一枚。まさにデーモン!

 

 

第3位 『KUBO 二本の弦の秘密』

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音楽:ダリオ・マリアネッリ

この作品、本当に驚きました!アニメーションとしてのクオリティが

高いのは言わずもがななんですが、とにかく音楽が素晴らしい。

和楽器の新たな可能性が生まれたような気がします。

日本文化へのリスペクトが音楽からも感じられました。

主題歌”While My Guiter Gently Weeps”の和アレンジも非常に

オシャレに仕上がっております。吹替版の山田兄弟ver.も良いので是非。

 

 

第2位『猿の惑星 聖戦記』

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音楽:マイケル・ジアッキーノ

あの『猿の惑星』新三部作の完結編。お見事です。

シンプル傾向にある今日の映画音楽界、ここまでふんだんに楽器を

使ったオーケストレーションと徹底的に作りこまれた

フィルムスコアリングに唸らずにはいられませんでした。

凄いです。ジアッキーノに拍手です。これ、フルオケでやったら

鳥肌モノだと思います。ぜひやってくれ〜もしくはやらせてくれ〜。

 

 

第1位 『ラ・ラ・ランド

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音楽:ジャスティン・ハーウィッツ

昨年売れたサントラ第1位の『ラ・ラ・ランド』です。

だってめっちゃ良いもん、売れるわそんなん。

って感じで、何も言うことないくらい良かったです。パチパチ。

ジャズに限らず、いろんなジャンルの音楽が融合していて、

どれもメロディは程よくキャッチー。

聞けば聞くほどよくできてるな〜と未だに聞き込んでしまいます。

映画音楽史に残る名作が誕生しました。

 

 

やっと書き終わったぞーーーー、サントラ編!!!!

いや、今、何月よ?2月も終わろうとしています、すみません。

昨年も映画館でいろんな音楽と出会い、感動しました。

 

 

映画を作っているすべての人に心から拍手をお送りします。

今年もいっぱい映画見るぞーーーーーー!!!!!

 

 

以上、2017年ベストテンでした。おしまい。

7.『2017年映画ベストテン 〜邦画編〜』

前回に続きまして、2017年公開作品のベストテン

今回は邦画編をお送りします。

 

早速ランキング発表!

 

 

2017年映画ベストテン 〜邦画編〜

 

1.あゝ、荒野 前編・後編』

2.全員死刑

3.『僕らが本気で編むときは』

4.『海辺の生と死』

5.散歩する侵略者

6.帝一の國

7.勝手にふるえてろ

8.『美しい星』

9.三度目の殺人

10.『愚行録』

 

洋画編と同じく、ここから下は10位から順に

私のコメントを書いていきますので、

気になる作品があれば、そこだけでも見てみてください。

 

第10位 『愚行録』

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石川慶が初めての長編作品を監督したこの映画。

ある殺人事件を中心とした人間模様が描かれています。

原作と比べるとだいぶ薄れている部分もありますが、

人間の自己顕示欲の醜さがよくわかる作品です。

映画としてというよりも、出演している俳優たちの演技力が

素晴らしかったと思います。満島ひかり妻夫木聡は、特に。

ざらざら度高めですが、ストーリーも結構面白かったです。

 

第9位 『三度目の殺人

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とにかく、三隅役の役所広司の演技に圧倒されました。

コロコロと供述を変える三隅に翻弄される弁護士役には福山雅治

被害者の娘役の広瀬すずは、少し美少女すぎたかもしれません…(笑)

監督は『誰も知らない』の是枝裕和監督。

最近の作風とはまた違った重厚感があり、凄みを感じた作品でした。

ただ、最後の方はかなりあやふやな作りになってきて、

よく分からないまま終わってしまうので、若干消化不良気味です。

 

第8位 『美しい星』

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火星人、水星人、金星人に取り憑かれた家族のお話。

原作は、三島由紀夫著書の中でも異色なSF同名小説です。

それぞれのキャラクター設定とキャスティングがとても秀逸。

一番リアルだったのが、唯一家族の中で地球人のままだった

お母さん(中嶋朋子)。SFかと思いきや、彼女の存在のおかげで

地球滅亡の危機から、家族愛に話が転がっていくのです。

宇宙人がいたとして、彼らから見た地球は、救うべき星なのか。

新しいSF映画を見たような気がします。

 

第7位 『勝手にふるえてろ

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まず、一言。めっっっっっっっっちゃ、わかるよ!ヨシカ!!

個人的に非常に共感度の高い映画でした。

映画では、原作よりもさらにヨシカのイタさが際立っていて、

面白要素が強まっていました。

10年片思い中のイチと、会社の同僚のニの間で揺れるヨシカ。

松岡茉優にしかできなかった役だと思います。

友達になりたいよ、ってくらい、わかる…。

世の中の報われない女子必見です。

 

第6位 『帝一の國

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今をときめく菅田将暉主演。そして監督は、CMディレクターとして

活躍する永井聡。他の出演者も若手イケメン俳優のオンパレード。

ただただ、くだらないです。でも、笑えます。

死ぬほどくだらないことを、若手たちが全力で頑張る映画です。

原作とほぼ同じ温度感で映像化しているので

実写化映画では珍しく、違和感なく楽しめました。

そして若手俳優のテンションに負けないくらいテンション高めな

吉田鋼太郎。キレッキレでした、さすが(笑)

内容はないと言えばないのですが、とにかく面白かったです。

 

第5位 『散歩する侵略者

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黒沢清監督のSF映画。ある日、地球にやってきた宇宙人は

人間の体を乗っ取り、次々と”概念”を奪っていきます。

散歩する侵略者(に体を乗っ取られた人間)役は松田龍平なんですが、

あまりにも演技がナチュラルすぎて、この人、もしかしたら

もともと宇宙人なんじゃないの?というくらい(笑)

私たちはいかに”概念”に囲まれて生きているのか考えさせられ、

とても面白かったです。

爆破シーンのB級感はわざとだったのでしょうか…?

 

第4位 『海辺の生と死』

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太平洋大戦末期の奄美大島を舞台に、島で生まれ育ったトエと

島に赴任してきた海軍中尉・朔が惹かれ合う様を描いたこの作品。

モデルは作家の島尾ミホ島尾敏雄。実在の人物です。

トエ役には満島ひかり、朔中尉役には永山絢斗が。

思わず、よくぞ二人をキャスティングしたな、と唸ってしまいました。

島の自然もとても綺麗に映し出されていて、全体的に美しい映画でした。

戦時中に生きた若者の苦悩が、痛いほど伝わってきます。

 

第3位 『彼らが本気で編むときは』

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トランスジェンダーのリンコと、リンコの恋人・マキオ、

育児放棄されたマキオの姪・トモの物語です。

監督は『かもめ食堂』の荻上直子。こういう内容を

決して押し付けがましくなく、自然に描けるのはさすがだな

と思いました。見た後、ここまで素直に心から

「いい映画だった」と言える作品は少ないかもしれません。

リンコ役の生田斗真の徹底した役作りにも驚きました。

少しでも多くの人に見てもらいたい映画です。

 

第2位 『全員死刑

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福岡県で起こった大牟田4人殺人事件を元して作られたこの映画。

とにかく全てがぶっ飛んでいます。とんでもないです(笑)

詳しいことは、第5回に書きましたが、もしかしたら

2017年で一番映画館で笑った作品かもしれません。

まさに映画評論家・町山氏のいう通り”地獄のサザエさん”です。

番人ウケするとは全く思えませんが、面白いことは確かです。

映画の新しいジャンルを突きつけられました。

 

第1位 『あゝ、荒野 前編・後編』

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原作は寺山修司唯一の長編である同名小説。

主演は菅田将暉とヤン・イクチュンの二人です。

監督は岸善幸、テレビマンユニオンでは是枝裕和監督の同期です。

本当に素晴らしい作品でした。主演の二人が、約300分かけて

弱っちい若者から屈強なボクサーになっていく様が

とてつもなくかっこいい。そして、リアル。拍手です。

いろんな要素が含まれてはいますが、核となるのはやはり

若者の成長物語ではないでしょうか。圧巻でした。

 

 

とはいえ、おそらく上位に食い込んでくるであろう2017年公開の

邦画で見逃したのもたくさんあります。

 

彼女の人生は間違いじゃない』『今日から世界は君のもの』

『幼子われらに生まれ』(これ見ないでベストテンとか言ってすいません)

『人生フルーツ』『月と雷』『花筐−HANAGATAMI−』

 

まだまだ2018年の課題は多そう…(笑)

早いところ回収してまいりたいと思います。

 

では、次はサントラ編で!

6.『2017年映画ベストテン 〜洋画編〜』

早いもので、2017年も残りわずかになりました。

今年は340本の映画を見ました。

うち、日本で今年に公開された作品は105本。

 

見逃した映画もたくさんありますが、

私なりの2017年公開作品のベストテンを発表させていただきます!

 

とにかく数が多くて選ぶのが大変だったのと

本当に良い作品ばかりで、少し紹介もしたいなと思うので

洋画編、邦画編、サントラ編に分けて投稿します。

 

今回は洋画編です!じゃ、じゃ〜ん。

 

 

2017年映画ベストテン 〜洋画編〜

 

1.ブレードランナー 2049

2.ラ・ラ・ランド

3.『沈黙 −サイレンス−』

4.『ドリーム』

5.グッド・タイム

6.『パターソン』

7.『メッセージ』

8.パーティで女の子に話しかけるには

9.ダンケルク

10.『gifted/ギフテッド』

 

ここから下は、10位から順に

それぞれの作品に対する私のコメントを書いています。

少し長くなるので、もし気になる作品があったら、それだけでも

読んでくれたら嬉しいです。

 

第10位 『gifted/ギフテッド』

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米国や英国で進んでいる「ギフテッド教育」を題材にした作品。

メアリー役を演じたマッケンナ・グレイスちゃんの演技が素晴らしいです。

そして、フランク役のクリス・エヴァンスに絶対惚れます(笑)

この映画を見て、一人一人にあった教育の仕方を選択すべきだと

改めて思いました。監督は『(500)日のサマー』(2009)の

マーク・ウェブ。愛情に溢れた、温かい作品です。

 

第9位 ダンケルク

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さすが、クリストファー・ノーラン!拍手!!

第二次世界大戦の「ダンケルクの戦い」が陸・海・空からの視点で

描かれています。CGが一切使われていない映像は迫力の嵐。

ぜひ映画館で見てもらいたい映画ではありますが、

登場人物が多いので(しかも全員イケメン!!)

わからなくなりそうな人はお家で誰かに説明してもらいながらの

鑑賞をおすすめします。

 

第8位 パーティで女の子に話しかけるには

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ちょっと内気なパンク少年・エンはとあるパーティで

宇宙からやってきた異星人・ザンと出会い恋に落ちる。

まさに、SF版「ボーイ・ミーツ・ガール」です。

切なさと可愛さが宇宙で大爆発、さらにパンク音楽も相まって

なかなかカオスな世界が広がるのですが、個人的にとても好きでした。

エル・ファニングの妖精っぷりが異星人にぴったりです。

 

第7位 『メッセージ』

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ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるSF作品。

アカデミー賞では音響編集賞を受賞しました。ある日、地球に

現れた未確認物体。その正体を探る言語学者・ルイーズの物語です。

異文化コミュニケーションがいかに大変か、非常事態が発生したら

各国はどう動くのか、など、ただのSF映画ではなく

色々な面から見ることができて、大変面白いです。

ただ、これから見る人は予告編は絶対見ないでください!

誤解を招きかねないので。

 

第6位 『パターソン』

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パターソンに住む、詩人兼バスの運転手のパターソンの日常を

切り取った作品。いつもと変わらない日々の中にも、

目を凝らせば小さな変化があり、一日として昨日と同じ日はない。

そんなことを教えてくれる映画です。

愛犬・マーヴィンがとても良い味を出してます(笑)

主演のアダム・ドライバーは今やスター・ウォーズ俳優として

有名ですが、彼が演じてきた役の中で

パターソン役が今のところ一番なのではないでしょうか!

 

第5位 グッド・タイム

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ペニー・サフディ、ジョシュア・サフディ監督によるサスペンス映画。

NYを舞台に、最下層で生きる兄弟が銀行強盗を企てるストーリー。

アメリカの闇の部分を描きながらも、美しい映像と音楽に

ものすごく引き込まれました。

日本ではあまり多くの劇場で公開されなかったのが非常に残念です。

こういう作品こそ、多くの人に見てもらうべきだと思います。

主演はまさかの『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソン

こんなに演技派の俳優だとは思ってなかったので、驚きました…。

 

第4位 『ドリーム』

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1962年のNASAで活躍した黒人女性たちの物語です。

偏見や差別に負けず、誰よりも賢く有能な主人公たちが

とてもチャーミングに描かれていました。

どのキャラクターも、女性としてだけでなく、一人の人間として、

非常に魅力的です。また、冷戦時代のNASAで繰り広げられた

宇宙開発戦争を見るという点でも、面白かったです。

個人的には原題『Hidden Figures』のままの方が

よかったのではないかな、と思いました。

 

第3位 『沈黙 −サイレンス−』

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遠藤周作の『沈黙』を、マーティン・スコセッシ監督が映画化。

思っていたよりも原作に忠実に作られていて、驚きました。

また、鎖国時代の日本のこともよく研究されていて、

作品としてのクオリティは非常に高いと思います。

劇中、ほとんど音楽は流れず、OPとEDは自然音だけが

使用されているのも印象的でした。

まだの人は、原作を知っている人も、知らない人も、

一度、ぜひ見てください。自信を持っておすすめします。

 

第2位 ラ・ラ・ランド

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監督は『セッション』のデミアン・チャゼル。

もしかしたら、今年公開の映画の中で

一番見た人が多い作品なのではでしょうか。

私もこの映画に夢中になった一人です。

ここまで純粋なミュージカル映画として楽しめた作品は

本当に久しぶりのような気がします。

忘れかけていたエンターテイメントとしての

映画の楽しさを思い出しました。

ラ・ラ・ランド』最高!!

もう、ここでお伝えできるのはこれだけ(笑)!!

 

第1位 ブレードランナー 2049

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前作『ブレードランナー』の30年後を描く本作。

いやぁ、よくぞやってくれました、ドゥニ・ヴィルヌーヴ

ブレードランナー』についてはこのブログの第1回で書きましたが、

あの作品の続編となれば、相当なプレッシャーだったと思います。

しかし、”『ブレードランナー』の続編”ではなく、

”『ブレードランナー 2049』という自立した映画”として

評価される素晴らしい作品だったと思います。

圧倒的な映像美はもちろん、ストーリーもキャラクターも

とてもよく作り込まれていました。

これを見させられたら、前作ファンも黙るしかないです(笑)

 

 

ここに選んだ作品以外でも、今年公開された良い映画はたくさんあります。 

さすがアカデミー賞作品だけあって

『ムーンライト』や『マンチェスター・バイ・ザ・シー』は

かなり力強い作品だったと思います。

 

『わたしは、ダニエル・ブレイク』は英国の社会問題を言及していたし、

希望のかなた』では難民問題を題材としていました。

 

また、青春系映画だと『キングス・オブ・サマー』、

『スウィート17モンスター』なんかも良かったですね。

20センチュリー・ウーマン』は青春系に入るのかな…?

 

韓国映画もかなりパンチの強いものが多かったです。

『お嬢さん』、『哭声 コクソン』、『新感染』とジャンルは違えど

どれもこれも濃い作品ばかり。

 

何よりも個人的には、『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』で

相当テンションが上がったので今年一の思い出になりました(笑)

 

ということで、ついつい長くなってしまいましたが、

次回は、邦画編をお送りします。

はたして、今年中に全部の投稿ができるのでしょうか…こう御期待…。

5.『全員死刑』

今年もあと一ヶ月を切りましたので、

一番ヤバかった邦画2017を紹介したいと思います。

 

全員死刑』(2017)

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監督:小林勇貴

脚本:小林勇貴継田淳

音楽:中山考

撮影:鈴木啓造

出演:間宮祥太朗、毎熊克哉、六平直政入絵加奈子、清水葉月

原作:鈴木智彦「我が一家全員死刑

 

借金を抱えたある家族が、強盗目的で知人一家殺害を計画する。

原作は、2004年に実際に起こった大牟田4人殺人事件を

題材にして書かれた「我が一家全員死刑」。

主人公の次男・タカノリ(間宮祥太朗)目線で物語は進む。

 

あのね、とんでもありませんでした、この映画。

本当に度肝抜かれました。こんなの初めてだよ…。

 

まずさ、このポスターいいよね。Vシネっぽくて。

 

先日、ラジオで映画評論家の町山さんが『全員死刑』を紹介していて

「まあ、言ってしまえばこの映画は”地獄のサザエさん”ですよ!」

と言っていたんです。

 

それを聞いていた私は、

「なんだよ、”地獄のサザエさん”って!そんな映画あるか!」

と思わずツッコミを入れてしまったんだけど、

急にどんな映画なのか気になってきて、見に行ったわけです。

 

 

映画館はまあまあ混んでいて、私の両隣も埋まっていました。

右隣には大学生らしき男女3人グループ、

左隣には私と同じく一人で見にきていた若い女性。

 

あまり期待しないまま、映画はスタート。

始まったら、もう笑いが止まらなくて、どうしようかと思いました。

 

内容はとてもバイオレンスで、えげつないし、

見ていて全く気持ちよくないのに、とにかく爆笑してしまいます(笑)

 

そして、”地獄のサザエさん”、その通りでした。

さすが町山さん…。

 

しかし驚いたことに、映画館にいる全員が笑ってるわけじゃなくて

笑ってる人と笑ってない人で真っ二つ。

 

実際、私の右隣に座っていた大学生の男の子は

私とほぼ同じタイミングで爆笑してるのに、

私の左隣に座っていた女性と右隣の彼以外の男女は1ミリも笑ってなくて、

「ウソだろ」ってなりました。

 

もちろん心のどこかで

「この映画を見ながら笑っちゃいけない」って思ってる自分もいるんですが、

殺人の話で笑うなんて不謹慎でしょう、とそりゃ誰もが思うわけです。

 

でも、この映画はそんな常識から逸脱して、

とにかく笑かしてくる。モラルなんてないんじゃ!という感じで。

 

この事件自体、モラルなんて言葉は初めから存在しないような出来事です。

強盗殺人の計画はあまりにもずさんで、全てが行き当たりばったり。

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もちろん、すぐに足がつき、逮捕された家族4人は

罪のなすりつけ合いを繰り返し、父親は自殺未遂するわ、

長男は脱走するわ、法廷で喧嘩を始めるわ、で

しまいには退廷時に次男が「メリークリスマス!」

と、わけわからんことを叫ぶ始末。

 

さらに次男は獄中で結婚までしてる。カオスすぎます。

 

映画では、この家族4人が捕まるまでの犯行の経緯を描いていて

とにかく原作に忠実だといいいます。

この原作は、次男が獄中に書いた手記を元にして作られたもので

これギャグでしょう、と思うところも事実らしい。

 

そんなこと、ある?って感じです、本当に。

 

あと、劇中で主人公たちが使っている方言なんですが

これオリジナル方言なんだそうです。

「〜じゃんね」「〜だら」といろんな地域の方言を

ミックスさせているみたいです。

この方言も、また田舎のヤクザというキャラクターの凄みを

際立たせていたように感じます。

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ー『全員死刑』の音楽ー

 

作中では、いろんな音楽が使われているんですが、

内容とはかけ離れたクラシック音楽なんかも登場します。

 

そこでクラシック音楽流す!?ってシーンであえて使ったりとかしているので

音楽も確実に笑いの一つとして役割を担っていたな、と思います。

 

どの曲も無節操に選んだ感じで、バラバラのように一瞬思えますが

よくよく見ているとかなり考え込まれた選曲だったんじゃないでしょうか!

 

 

主人公を演じた間宮祥太朗に関していうと、

今まで若手イケメン俳優、という印象しかなかったのに

これが初主演映画ってだいぶ面白いな、と。

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最近の少女漫画原作の映画ではなく、

この映画を初主演作品に選んだことで

彼が単なるイケメン俳優じゃなくなったことは確かです。

 

実際の次男は、相撲部屋に弟子入りしていたほどの巨漢なので

間宮祥太朗が演じるのはイケメンすぎる気もするけど、

方言とか、薬でキマっちゃってるところとか、

どこか情けない一面を持っている感じとか、上手いなあと思いました。

 

タカノリ含め、家族4人とも本物のヤクザにしか見えません(笑)

 

個人的にはタカノリの彼女・カオリ(清水葉月)のキャラクター

がとても良かったですね。

 

アンモラルでバイオレンスな世界の中で笑いが存在する。

笑いながらも、ノリで人を殺してしまう狂気が本当に恐ろしい。

 

こんな映画見たことないです。

確実に今年イチ、ヤバい映画だと断言します。

 

最後に。

「ばっかじゃねーの」この一言に尽きます。

 

4.『フランシス・ハ』

グレタ・ガーウィグが監督、脚本を書いた『Lady Bird(原題)』の

評判がとても良いようです。

 

早く日本で公開にならないかなあ、と楽しみにしています。

ということで、今回は私が大好きなグレタ・ガーウィグ主演作品。

 

フランシス・ハ』(2014)

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原題:『FRANCES HA』

監督:ノア・バームバック

脚本:ノア・バームバックグレタ・ガーウィグ

音楽:ジョルジュ・ドリリュー

撮影:サム・レヴィ

出演:グレタ・ガーウィグ

 

NYでダンサーを目指すフランシスの日常を切り取った映画です。

親友に彼氏ができて、住むところがなくなったり

知り合いの家を転々としたり、ダンサーをクビになったり。

 

踏んだり蹴ったりなんだけど、どこか明るくて前向きな

フランシスがとても自然に描かれていて良いなあ、と思いました。

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個人的にとても共感度の高い映画でした。終始、わかるわ〜、の連続。

 

どうしても好きなことだけをやりたくて、

周りに助けてもらいながらどうにか生活してる感じとか

 

恋愛には全く入っていけない感じとか

 

お金ないくせに思いつきでパリに行っちゃう感じとか

 

やっぱり田舎は面白くなくて、こんなところで生活するくらいなら

NY戻って仕事するか、ってなる感じとか

 

もう全部、わかるわ〜。

 

「この子いつまでふらふらしてるの、彼氏も作らないで」

って絶対言われてそう〜、ってか言われているよ〜、私は〜

ってなりました。

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この言葉、あんまり好きじゃないんだけど、

あえて言うと”自分らしい”わけです、フランシスは。

 

フランシスを演じたグレタ・ガーウィグが、また良い。

彼女、そんなに特別美人でもないし、結構体大きいし

いわゆる海外女優って感じではないのだけど、味が良いのです。

 

最近の作品だと『20センチュリー・ウーマン』(2017)でアビー役、

赤髪のグレタ・ガーウィグがめちゃくちゃ可愛かったです。

 

彼女は、演技をしてるって感じさせない自然な演技をするので

映画を見てるっていうよりも、実際にいる人物の日常ムービー

見てるみたいな気分になります。

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ー『フランシス・ハ』の音楽ー

 

主題歌にはデヴィッド・ボウイの「モダン・ラブ」が使われてて

この曲は監督のノア・バームバックが初めて買ったレコードなんだそうです。

 

フランシスがNYの街中をただひたすら走るシーンなんか

本当にぴったりでした。

 

あと、トリフォー作品でよく使われていたジョルジュ・ドルリューの音楽が

たくさん使われていて、全編モノクロで描かれてるあたりからしても

この作品はヌーヴェルヴァーグのオマージュなんだな、と思いました。

 

サントラ、すっごい良いです。

ずっっっっっと聞いちゃいます。

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 フランシスみたいに走るように毎日を過ごしたい。

今時の若い女の子をレトロなアプローチで描くことによって

より、作品の良さが際立ったんじゃないでしょうか!

 

とにかく、フランシス、めっちゃ好きです。

友達になってください!

 

3.『アイズ ワイド シャット』

ついにクリスマスまであと一ヶ月。

時空歪んでる?ってくらい早いですね、今年も。

 

クリスマス映画ってたっくさんあるんですが、今回は

今まで見てきた中で一番衝撃的だったクリスマス映画を。

 

アイズ ワイド シャット』(2003)

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原題:『EYES WIDE SHUT』

監督:スタンリー・キューブリック

脚本:スタンリー・キューブリックフレデリック・ラファエル

音楽:ジョスリン・プーク

撮影:ラリー・スミス

出演:トム・クルーズニコール・キッドマン

原作:アルトゥル・シュニッツラー『夢小説』

 

実生活でも夫婦だったトム・クルーズニコール・キッドマン

ハーフォード夫妻役で共演したことで話題になったが、この後二人は離婚。

この映画の撮影が離婚のきっかけになったとも言われています。

 

そして、試写完成披露の数日後、スタンリー・キューブリックは急死。

アイズ ワイド シャット』はキューブリックの遺作となったわけです。

 

ニューヨークに住む医者・ビル(トム・クルーズ)が、

妻アリス(ニコール・キッドマン)の発言をきっかけに性的な妄想に囚われ

エロい不思議体験をする、というお話。

 

まあ、これだけだと本当に何それ?って感じなんです。

でもなんだかよくわからない…。

わからないから、何度も見たり、いろんな解説を見漁ったりして、

「あーそういうこと」ってなるまで随分時間がかかりました。

 

この映画のメッセージを簡単に言ってしまえば、

「いくら夫婦でも見せてはいけない一面があって

そこだけは絶対に触れない方がいいですよ」ってことらしいです。

 

映画評論家の町山智浩さん曰く、

キューブリック作品の中で一番大事なのはトイレのシーンで、

トイレで用を足すというのは人生を表している

キューブリック自身考えていたそう。

 

確かに、この作品の中でも何度もトイレのシーンが出てきます。

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ハーフォード夫妻がクリスマス・パーティーに行くために

自宅で支度をしているシーンから始まるんですが、

夫であるビルが鏡で髪の毛を整えている後ろで

妻であるアリスがトイレで用を足している、という場面があるんです。

 

アメリカとかのトイレって、ホテルみたいに洗面所にもなってるでしょ。

だから、夫が洗面台を使っている真後ろで妻が用を足す

っていう衝撃的な状態なんですけど、これ日本じゃありえないよね?笑

 

日本ではほとんどの家庭がトイレと洗面所って別々だし、

一緒だったとしても、誰かがトイレを使ってる時は洗面所には入らない!

 

でも、あまりにも日常的にこのシーンが描かれてるから、

もしかしたらアメリカでは普通にあることなのかな、

と思ったりもしたんですが。

 

とにかく、初っ端にこういうシーンがあって、

この時点でハーフォード夫妻の倦怠期ぶりが見えてくるわけです。

面白いなあ、、、

 

そしてこの映画の中で重要なキーワードとなる”フィデリオ”。

 

この単語は、ベートーヴェンが生涯で唯一完成させたオペラの題名。

このオペラは「忠実」とか「誠実」といったことがテーマになっていて、

フィデリオ”って言葉にもその意味が含まれています。

 

物語の中盤、ビルは興味本位で、あるサロンへ潜入。

そのサロンへ入るためのパスワードが”フィデリオ”で、

そこではものすごいエロいことが繰り広げられてるんです。

 

ビルは、この物語の中で色々な誘惑に遭遇するくせに、

いつも結局浮気できないで終わるのはなんでだろう、

とずっと思っていたけど

これは”フィデリオ”効果だったんだと後から知って納得。

 

わかりにくすぎないですか、キューブリックさん。

 

ちなみにこの例のサロンでの儀式のシーン、

ダ・ヴィンチ・コード』(2006)を思い出した。

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実際にキューブリックは秘密結社について

かなり研究をしていたんだとか。

彼の死はそれに関係している、なんて噂もあるほど。こわい。

 

 

ー『アイズ ワイド シャット』の音楽ー

 

この映画の中で、テーマ曲のように使われている音楽が

ショスタコーヴィッチの「舞台管弦楽のための組曲 ワルツ2」。

 

20世紀のソ連時代にミハイル・カラトーゾフというロシア人監督が

『第一軍用列車』という映画を作り、

その劇判としてショスタコが書いたのがこの曲です。

 

もともと映画用に書かれている曲なだけあって、

非常に映像的な音楽になっていて、この曲自体とても面白い。

これをキューブリックは上手く映画に取り入れているのです。

 

2001年宇宙の旅』(1968)が代表的ですが、キューブリック

作品の中で既存音楽を使うのがとても上手い。

 

もう一曲、『アイズ ワイド シャット』の中で

ジョルジュ・リゲティの「ムジカ・リチェルカータ」

という曲も使われています。

これは、パッと聴き音楽とは気づかないレベルのバリバリの現代音楽。

 

神経質なピアノの連続する音が、緊張感を助長させていて

とても面白い効果を生み出しています。

現代音楽なのに、映画音楽としても違和感なく使える音楽を作り出していて、

さすが、ジョルジュ・リゲティだな、と思いました。

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キューブリックの作品はどれも

私がブログで語れるほど簡単なものではないのだけど、

見た後に、必ず頭を殴られたような衝撃を受けます。

 

わからないことばかりなんだけど、なんかすごいもの見ちゃった

みたいな気分にさせてくれるので大好きです。

 

今年のクリスマス、

私は家でおとなしく映画を見ることにします。